短編小説「怖くてふりむけない」
わたしとさゆりが腕を組んで笑っていた。
テーブルに置かれたフォトフレームからは、幸せオーラがでているようだった。
「おかえり。その写真きれいでしょ」
声にふりむくと、さゆりがパソコンラックを指さしていた。見なれないプリンタが目にとまる。たしか、写真画質の最新型だ。
「このプリンタで印刷したのよ」
さゆりがにんまりと笑った。にこり、じゃないところが彼女らしい。
「お誕生日おめでとう」
プレゼントしてくれるというのか!?
わたしは感激のあまり、さゆりに抱きつこうと一歩ふみだした。しかし、急な動作だったため、右足が明後日の方向に! まるで計ったかのように、右足がティッシュの箱にはまってしまった。わたしはよろけて、ラックに手をついた。肘がプリンタにあたる。落下は、やけにゆっくりとして見えた。
バキ! とすごい音がした。
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