小説「死神の手(仮)」6

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 酒井は首をひねった。考え事をするときの悪癖で、敵からも考え中だと看破されてしまうため、上司や同僚からは治せといわれ続けていた。たぶん、これからもいわれ続けるだろう。
「じゃあしょうがない。取り引きはな──」
「たああああああ!」
 裂ぱくの気合が夜空に響き渡った。月光を背中に受けて黒影の人物が舞い下りてくる。
 その人物は、銀色に輝く巨大な斧を頭上にかかげていた。
「はあ!」
 酒井と男の中間点に着地すると同時に斧が振り下ろされる。月光を跳ね返す銀色が弧を描き、死神の手をないだあと地面に深く食い込んだ。
「いでええええ!」
 悲鳴を迸らせたのは酒井であった。なにがおこったのかわからなかった。突然、体の中心で激痛が爆発したのだ。
 だが、痛みはすぐにひいていった。まるでなにごともなかったかのようだった。酒井は激痛に閉じていた目をうすくあけ、直後おおきく見開いた。
 死神の手がなくなっていたのだ。正確にいえば、とちゅうから千切れてしまってそこから先はどこにも見えなかった。消滅してしまったようだ。
 乱入してきた人影は斧を地面から抜いていた。
「切られたのか。その斧で……」
 絶句するしかなかった。死神の手はこの世の物体に接触されないはずではなかったか。

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このページは、浅川こうすけが2007年6月23日 18:39に書いたブログ記事です。

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