短編小説「さらば、富士山」
日本人の祖先については諸説あるが、真実はおっぱい星からきた異星人なのであった。
彼らは地球に降り立つや、失意のどん底に突き落とされた。膝を折り、涙はらはら、地面に染みをつくってしまうほどに。
心がポッキリと音をたてたのもむべなるかな。安住の地を求めて辿りついたのに、緑の星にはおっぱいが存在しなかったのだ。
だが、彼らのおっぱい魂には、不屈の精神が宿っていた。おっぱい製造機ともいうべき、ワンダフル装置を完成させたのである。
装置からのびる砲身が、地面にむいた。シビビビビと、不思議光線が照射される。命中した箇所が隆起し、巨大な岩山ができた。おっぱい製造機が、ドリルで岩山を削りながら、中心部へと進んでいく。
そうして、異性人たちが見守るなか、岩山から宇宙的人工皮膚がにじみだし、あれよあれよと、見上げるほどのおっぱいが完成した。
ぷるるんと震えたことによって、でっかいトカゲが絶滅したが、随喜の涙を流すおっぱい星人にとって、そんなことは些事だった。
あれから何万年たったのか。
異星人たちは、みずからの出自を忘れてしまった。巨大おっぱいも、皮膚保持機構の不具合でスリープ状態となり、岩山部分がむき出しとなった。
たったいま、霊峰富士がぷるるんおっぱいと化したのは、だから、長い長い眠りから覚めただけなのだった。
(完)
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