短編小説「眼球飛行物体」

| | コメント(0) | トラックバック(1)

 いま、地球人は選択を迫られていた。
 UFO研究家が感涙にむせんで、はや三年になろうか。記念日となったあの日、宇宙の彼方から飛来してきたUFOは、円盤型でも葉巻型でもなかった。巨大な白玉の真ん中に、エメラルドグリーンの瞳が輝く眼球だったのだ。
 地球人たちが戸惑いつつ見守るなか、はたして眼球が泣いた。陽光にきらめく涙が数粒、地上にむかって落下してくる。
 着地した涙たちには小さな手足が生え、かわいらしい目も開いた。マスコットキャラクターかと見まごうばかりの彼らは、外宇宙からやってきた知的生命体であったのだ。
 人びとは温厚な彼らを歓迎し、抱擁をもってむかえた。ある婦人などは、宇宙人の愛らしさに、五分以上も抱きしめていたほどだ。
 地球を気にいった宇宙人たちが、お願いをしてきた。故郷の同胞にもこの星を紹介したいので、遊びにくるよう誘ってもよいか、と。
 人類はみな、こころよく同意した。
 そして、三年後にやってきたUFOは、円盤型や葉巻型ではなく、眼球ですらもなかった。
 巨大なヒップだったのだ。
 いま、臭い立つ宇宙人たちが、ブリブリと降りてくる。

カテゴリ

トラックバック(1)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 短編小説「眼球飛行物体」

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://asakawa.sakura.ne.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/21

» 小説では全角1文字さげるけど(オンライン小説 な オリジナル小説 サイト うにたな)~のトラックバック

 小説では段落をかえたあとに全角1文字さげるのが決まりである(行頭の「など例外は... 続きを読む

コメントする


画像の中に見える文字を入力してください。

このブログを購読

購読する

このブログ記事について

このページは、浅川こうすけが2007年4月21日 23:29に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「官能小説を○○した理由」です。

次のブログ記事は「ブラウン管は重いのよ」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

最近のコメント

Powered by Movable Type 4.01