短編小説「眼球飛行物体」
いま、地球人は選択を迫られていた。
UFO研究家が感涙にむせんで、はや三年になろうか。記念日となったあの日、宇宙の彼方から飛来してきたUFOは、円盤型でも葉巻型でもなかった。巨大な白玉の真ん中に、エメラルドグリーンの瞳が輝く眼球だったのだ。
地球人たちが戸惑いつつ見守るなか、はたして眼球が泣いた。陽光にきらめく涙が数粒、地上にむかって落下してくる。
着地した涙たちには小さな手足が生え、かわいらしい目も開いた。マスコットキャラクターかと見まごうばかりの彼らは、外宇宙からやってきた知的生命体であったのだ。
人びとは温厚な彼らを歓迎し、抱擁をもってむかえた。ある婦人などは、宇宙人の愛らしさに、五分以上も抱きしめていたほどだ。
地球を気にいった宇宙人たちが、お願いをしてきた。故郷の同胞にもこの星を紹介したいので、遊びにくるよう誘ってもよいか、と。
人類はみな、こころよく同意した。
そして、三年後にやってきたUFOは、円盤型や葉巻型ではなく、眼球ですらもなかった。
巨大なヒップだったのだ。
いま、臭い立つ宇宙人たちが、ブリブリと降りてくる。
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