小説「星人募集中3」(推敲前)
ひさしぶりの満腹感と、ふってわいた疑問によって注意力がにぶっていた。
「動くな。ゆっくり両手をあげろ」
固いなにかを背中に押しつけられるまで、男の接近に気づけなかった。固いなにかが銃の先かどうかはわからない。
折原は両手をあげながら、
「地球の言葉だな。ギャレット号のクルーか?」
ギャレット号とは乗ってきた宇宙船の名であった。この惑星のどこかに墜落しているはずだ。
「ギャレット号?」
背後の男がつぶやいた。尻上がりのイントネーションだ。知らないとみえる。
「三日前にこの惑星に墜落した宇宙船だ。見てなかったのか? ここから距離は離れているが、かなりのおおきさで火を吹いてたんだがな。そうとう目だってたはずだ」
「知らないな。そんなもの」
背後の男がにべもなくこたえた。
ポッドで脱出するさい、射出の角度によっては想定以上に飛んでしまうことがある。思った以上に距離が離れてしまっているらしい。どうりでほかのクルーと会えないはずだ。
──いや、そんことよりいまは。
背後の男の正体が気になった。ギャレット号のクルーではないのに地球の言葉をしゃべっている。してみると、自分たちのほかにも、この惑星に不時着している地球人がいたのだ。
「なあ。ここにあった肉はあんたのかい? 勝手に食って悪かったよ。でも、腹がすいてたんだ。かんべんしてくれないか」
折原はおどけた調子で話しかけてみた。
「とりあえず、背中にあたってるのをどけてほしいんだけどな」
「──なにもしないか?」
「ああ、もちろん。なにもしやしないよ」
背後の男がすなおに武器をさげてくれた。
折原は彼を刺激しないように、両手をあげたままゆっくりと振りかえり、
「あ、ああ」
と、いったっきり絶句してしまった。
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