小説「星人募集中6」(推敲前)

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 遠目には黒い宇宙船に見えた。しかし、近づくにつれ、外壁が変色しているのだとわかってきた。惑星の大気圏に突入したときの熱と、その後三年間雨ざらしにあっていたためだろう。
 そばまでやってきて把握できたこともある。少なからぬ外壁がはがれており、船内が外から見えるのだ。
「不幸中の幸いともいえるんですよ。外壁がはがれてくれたおかげで、電源が死んでいても外へでられます」
 気をきかせた岡島が説明してくれた。
 折原は肩を落とした。
「やっぱり太陽光発電システムは死んでるんだな」
「ええ、残念ながら。必要最低限の機材はバッテリで動かしていますが、どれだけ省エネ運用しても、あと二年ほどしか持ちそうにありません」
「ギャレット号に──いや、ギャレット号の残骸のなかにバッテリは残っているかもしれない」
「ほお、それは吉報です」
「もっとも、そのギャレット号がどこに墜落したのかわからないんだがな」
「探索チームをつくって探しましょう。食料も水も豊富にありますからね。食料調達チームを探索チームとしましょう」
 ここにくるまでに、この惑星についてだいたいのところは聞いていた。惑星のひろい範囲が温暖湿潤気候であること。人間の天敵になりうるような動物がいないこと。また、動物や昆虫の姿が見えない理由もわかった。
「どういう習性なのか、専門家がいないのでよくわからないんですがね。動物も虫も、決まったエリアにしか生息していないんですよ。決まったエリアからはまったくでてこない。このあたりでいうと、通ってきた森のなかだけです」
 食料の調達はその森で行っているそうだ。

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このページは、浅川こうすけが2007年8月19日 09:52に書いたブログ記事です。

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