小説「星人募集中8」(推敲前)
折原は腰を落とし両足にバネをためた。いつでも動きだせるようにそなえたのだ。
「どうしたんですか、折原さん? 急に構えたりなんかして」
岡島はあいかわらずにこやかであった。
どうしたんですかと問われても、折原自身、理由がはっきりとわからなかった。嫌な予感に肌をなめられただけなのだ。
折原は無言でふたりの岡島をにらんだ。視界の隅で山田もとらえている。
こめかみに浮いた汗がほほまで流れる。耳のそばまで落ちてきた。
音がした。汗の流れる音ではない。靴が草をふむ音だ。ひとつではない。複数の靴音。
「折原さん」
岡島の笑みが深くなった。
「みんなが帰ってきましたよ」
草をふむ音が近づいてくる。音は、ひとつ、ふたつ、みっつ。
「この惑星の太陽は」
ふたりの岡島が太陽を指差した。
「沈みだすと早いですからね」
むっつ、ななつ、やっつ、ここのつ。まだ増える。
「みんな早めに戻ってくるようにしてるんですよ」
じゅうさん、じゅうし、じゅうご。靴音の主はどんな顔をしているのか。
まだまだ増える。
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